MIMに関する記事を、プレス技術のコンサルティングをしている方が書いて
      送っていただきました。
      プレス業界から観たMIMの可能性・脅威に関するレポートです。
                                          (1999年秋のレポート)


    1.金属射出成形法(MIM)とは

    昔からある粉末冶金法に樹脂などの流動するバインダを混合して射出成形出来る
    ようにした方法。
    ダイキャストより融点の高い材料を比較的高精度に、粉末冶金より複雑な形状に
    削り加工無しで成形できるとして登場した工法。
    1970年代スウェーデンのウィ−チ博士が発明
    1980年代前半 米国 商業ベース生産開始
    1980年代後半 日本 商業ベース生産開始
    30社程度が参入および参入予定

    2.製造プロセス

    2.1金属粉末
    流動性と高密度焼結体を得るため微細な金属粉末を使用する

    平均粒子の径焼結密度
    MIM 10 ミクロン98%
    粉末冶金80 ミクロン85%

    金属粉末の製法
    落下する溶解金属に高圧水を吹き付けて霧状に飛散させたものをふるいわける
    これを水アトマイズ法といい合金の粉末を造るのに適する。
    他にガスを吹き付けるガスアトマイズ法がある。水アトマイズ法で得られる粉末は
    異方形、ガスアトマイズ法では球形である。
    粉末供給企業 日本3社(太平洋金属、住友など)外国3社

    2.2バインダ
    MIM技術上最重要ポイントで成分、添加量、添加方法は各社のノウハウ
    バインダに求められる特性
    成形性成形の欠陥が無く容易に充填する
    脱脂保形性脱脂時に膨れが無く、製品形状を保つ

    脱脂時には連続的にバインダがガス化する必要がある。間欠的になると
    膨れや変形の原因になる。
    バインダの種類
    熱可塑性樹脂、ワックス、可塑材、滑材 などを混合して使う。
    カンテンが大変に良いという報告もあり注目されている。

    2.3混練
    金属粉末とミックスされたバインダ(体積比でほぼ50%づつ)を混練機に入れて
    均一になるよう練り合わせたあとで、粒状のペレットにする。

    2.4射出成形
    射出成形機や金型はほとんどプラスチック用のもので問題はなく、実際にプラ用
    のもので生産をしている。
    射出成形品は色、硬さともチョコレートと同じ程度で強く当てると壊れる。

    金属粉末をとけたバインダが包み込むことで流動性を得る。
    バリが出やすいので型合わせ、入れ子合わせには要注意
    ゲートなどはプラスチックより大き目にする
    エアー抜けの良い金型にすること
    プラスチックと同じ様にひけ、割れ、しわ、ウェルドなどの不良がある。

    生産のサイクルは15から30秒
    例 携帯電話振動モータ用振動用分銅 タングステン製 200万個/月
    32個取り金型

    2.5脱バインダ (脱脂)
    射出成形品の中にあるバインダを気化して除去する。
    金属酸化防止のため不活性ガス(アルゴンなど)の中で加熱する。
    急速に温度を上げると成形体の中で急激な気化つまり膨れが起きる。
    また結合の弱いバインダを急に気化させると成形品が崩れてしまう。
    特に肉厚の部分ではゆっくりと気化させることが重要。
    通常8時間以上、パターヘッドなどの大型部品では4日間連続加熱など
    完全にバインダを除去してしまうと形が崩れてしまうので僅かに残して
    形くずれを防ぐ。
    射出成形品からの寸法変化はほとんど無く、スカスカのビスケットの様なもので
    くずれ易い。

    2.6焼結
    隣り合う金属粒子を拡散接合により焼結する。真空炉が主流
    加熱温度は金属の軟化温度より僅かに低い温度。鉄系1200℃〜1400℃
    収縮率 13%〜 20%
    計算根拠(体積率50%のバインダ空間が完全に充填されたとして)
    焼結後の1辺の長さ L /焼結前の1辺の長さ L0
    {L}3乗={L0}3乗×1/2
    {L}=0.7937{L0}
    実際には密度97%〜 98%(空間率3%〜 2%)
    充填状態が均一なためほぼ等方収縮となる。
    ただし成形品の炉内での設置方法によって形が崩れてしまったり、
    設置底面の摩擦によって収縮できなかったりする。このあたりは
    大変なノウハウ。

    ここまで見てきたようにほとんど超硬の造り方とほとんど同じ

    3.特徴
    3.1形状精度
    あらゆる金属粉末の部品製造で、複雑形状の成形が可能
    異種金属の射出成形品を前もって作っておき脱バインダの前に組み合わせれば
    異種金属の接合部品や、中空部品の製作が可能になる。
    経済的には30mm以下の部品に適している。
    最大直径100mm 最大厚さ10mm 最小穴径0.3mm 最小肉厚0.4mm
    一般公差 対象長さの±0.5%(特注±0.3%)
    表面粗度 10ミクロン

    4.市場
    時計部品の加工を主に対象として成長してきた加工方法で、時計メーカーを
    親とする企業が多い。
    上記加工サイズもそのあたりからきている。

    1998年の日本における市場規模約89億円年率伸び率15〜20%
    最大手で約24億の売り上げ(材料費15%程度)

    世界では200〜250億円の規模(最大手30〜35億円 AFT,USA)
    これから自動車関連の部品が増加していくことから市場規模は飛躍的に伸びる予測
    タングステン系材料部品が伸びる情勢
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    それにしても本格的に商業ベースに乗っていると思っていた業界の売り上げ規模が
    その割に伸びていないその理由
    ○ サブミクロンの精度が要求されると追加工が必要になる。
    ○ 加工経路から判るようにバッチ処理のうえコストが高い

    説明の当事者がプレスで加工できるものはどんなことをしても MIMではかなわない
    といっておりました。
    このあたりに我々プレス加工との一線があるのかもしれません。