<表面処理>

T.メッキ(鍍金)
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一般食品の世界で、乳製品が変質「腐って」大変な社会問題になったことは記憶に新しい。
金属の世界での「腐食」を「錆び」と言い、これを「防食」する手段の一つが「鍍金:メッキ」である。
日本国内で問題にならなかったものが、出荷先の香港やシンガポールの港の倉庫で錆の粉を噴い
てしまい会社は大損失、設計者・品質保証の責任者の首が飛んだと言った話しは何度も聞いたこ
とがある。
世界的に資源の保全を図る為に統計がとられているが、日本のGNPの1〜3%が腐食により損失
されているそうだ。

@)金属を腐食から守る
塗装やメッキなどのバリヤー(障壁・膜)で金属面を完全に遮蔽すれば良いのだが、完全な膜を作る
ことは難しい。
また作った膜が更に腐食する。
次のことを考えながら設計しよう。
 @大気中の酸化(化学腐食)
 A酸性溶液での溶解
 B中性塩溶液中での腐食
常に、問題となるのは湿度環境での腐食で、だいたいの場合、水分と酸素と金属が同時に存在する。
このとき腐食を助長させる陰性のイオンを供給する塩類があれば腐食は更に促進される。
このような水溶液中での腐食の多くは、電気的に反応が進行するもので、この反応を妨げるか逆に
利用して金属を防食することになる。

一般的なメッキ処理を紹介しよう。(表示記号の説明はここをクリック


種別
適用素材
説明














グシ


説明文
メッキ厚 μ耐磨耗耐食性外観
硬さ HVコスト (円)接触抵抗使用例




一般
ニッケル


化学Niの出現までは、メッキの王様だった。
3〜8 μ
無・半光沢の白色
200〜30030〜50
内部部品
光沢
ニッケル


一般Niより平滑で光沢がある。
3〜8内部
5〜10準外観
10〜15外部
白色光沢
300〜40030〜60
小さい外観部品
黒色
ニッケル

一般ニッケルの上に1μの黒Niを乗せる。両者を含めて
黒色ニッケルメッキと言う。但し、銅系は黒Ni1μのみで良い。
一般Ni+1μ
×
やや茶系の黒色
200〜300一般Ni+5〜10
×
光学系の反射防止
一般
クローム


メッキ厚の均一性は良いが付き回りが悪い。ピンホールが生じやすいので、下地に一般ニッケルを付けた方が良い。
3〜8 μ
白色光沢
400〜60030〜60
×
1.5〜2Ω
外観部品
耐磨耗性を要求
される部品
硬質
クローム


平準面で耐磨耗性を必要とする部品に向いている。
5〜10 μ
白色光沢
600〜1000一般クロムの2〜3倍
×
圧延ローラー
モールドやプレスの金型
黒色
クローム


鉄鋼部品は必ず一般ニッケルを下地に施す。チタン、パーマロイ部品には最下地に化学ニッケルを行いその上に一般ニッケルを施してから処理する。
0.2〜0.5μ
×
黒色
60〜100
×
外観、反射防止
一般
ニッケル
クローム


普通、クロムメッキと呼ぶのはこの処理。耐磨耗性、外観の美しさが特徴
外観 5〜10
内部 3〜8
(クロム層は0.5〜1)
白色半光沢
400〜60030〜60 ×
1.5〜2Ω
外観、耐磨耗
光沢
ニッケル
クロム


光沢Niメッキ処理後、一般クロームメッキを施す。
5〜7
クロム層0.5〜1
白色光沢
400〜60030〜60
×
外観部品
亜鉛
メッキ





亜鉛ダイカストの防錆としてクロメート処理して使用する。
7〜12
×
×
白色半光沢
〜1008〜12
余り使用されない
有色
亜鉛
クロメート




耐磨耗性が低く、カジリが出やすい。
5〜10
クロメート層は1μ以下
×
褐色
〜1008〜12
内部部品・下地
黒色
亜鉛
クロメート




下地に亜鉛メッキをおこなってから、クロメ処理を行う。
5〜10
クロメート層は1μ以下
×
黒色
〜10010〜12
光学部品・黒ビス
脱色
亜鉛
クロメート




ユニクロと呼ばれているメッキ。
5〜10
クロメート層は1μ以下
×
青味を帯びた
光沢
〜1008〜12
 ○
光学部品・白ビス

メッキ


必要により、ニッケルメッキの下地に使用される。
30〜50
×
朱色
100〜200低い
電気部品・プリント
基板

メッキ



接触抵抗が最も低く半田付製も良い。通常は下地に一般Niメッキ。
1〜3
(金層は0.5〜1)
金色
60〜70高い

0.3mΩ
電気接点、装飾品

メッキ




通常は下地に一般ニッケルメッキを施す。大気中で変色し接触抵抗が上がるので接点としては使用できない。
5〜7
(銀層は2〜5)
×
銀色
60〜140高い

0.4mΩ
導波管、高周波部品
ロジウム
メッキ



耐磨耗性は金より良いために、接触圧の取れる摺動部に向く。
1〜3
(ロジウム層は
0.5〜1)
白色光沢
600〜850高い

0.8mΩ
電気部品
高速摺動部品

メッキ



融点が低いので半田付性が良い。端子等の膜厚は7〜9μ。
1〜3
白色光沢
40〜60低い
電気部品




化学
ニッケル




メッキ厚の均一性が良い。メッキの付き回りが良い。ピンホールが少ない。
3〜6 μ
黄色を帯びた
白色光沢
400〜500HV34〜40
×
最も多用されている
黒色
化学
ニッケル





鉄鋼部品の下地に化学ニッケルを行い、その上に黒色Niメッキをした
3〜6 μ
×
黒色
200〜300化学ニッケル+10〜15
×
光学系の反射防止・塗装下地





一般
アルマイト





素材の合金添加物によって、色々な色調を帯びる。
5〜15 μ
白色
350〜45030〜35
×
構造部品
黒色
アルマイト





一般アルマイトを黒染色したもの、A5056が最も黒がでる。
5〜15 μ
黒色
350〜45030〜35
×
外観部品
艶消し
アルマイト





表面を化学エッチングした後にアルマイトを処理したもの。
5〜15 μ
艶消し白色
350〜45030〜35
×
外観部品
艶消し
黒色
アルマイト





素材の合金添加物によって、色々な色調を帯びる。
5〜15 μ
艶消し黒色
350〜45030〜35
×
反射防止
光沢
アルマイト





化学研磨後のアルマイト処理として使用。
5〜15 μ
白色光沢
350〜45030〜35
×
レンズマウント・工具
硬質
アルマイト





膜厚が厚くなるほど、アルマイト表面にクラックが入るので注意。   
25〜70 μ
白色
400〜500高い
×
機能部品



鉄鋼
燐酸塩処理





パーカーライジング・ボンデライジング等処理材の違いで各種方法がある。
1〜1.5 μ
 ×
光沢のない灰色
低い
塗装下地
アルミ
化成処理
アロジン





アルミ表面にクロメートの皮膜を生成させる方法。
無色(白色)アロジン#1000、有色(黄色)アロジン#1200
0.2〜0.5
×
無色から黄褐色
低い
塗装下地・アルミDC
亜鉛
ダイカスト化成処理






亜鉛ダイカストに使用。クロメートの皮膜を生成させる。
0.2〜0.5
×
黄褐色
低い
×
塗装下地・亜鉛DC
鉄鋼
黒着色





僅かな傷があると錆びやすく、耐磨耗、耐食性が失われる。
0.2〜0.5
×
×
光沢のある黒色
低い
内部摺動部品
ステンレス
黒着色





柔クロム酸沸騰(艶消)アルカリ沸騰法(光沢)等の処理法がある。
0.2〜0.5
黒色
低い
×
外観・反射防止
マグネ
防食
クロメート





鍛造、鋳造品の一時的な防蝕をするために使用。
0.2〜0.5
×
黄赤色又は金色
低い
×
仮防錆・塗装下地
マグネ
防食
亜セレン





耐食性に優れ、塗装下地に良好である。
0.2〜0.5
×
褐色又は暗褐色
低い
×
仮防錆・塗装下地
マグネ
防食
ダイクロメート





耐食性に優れ、塗装下地に良好である。
0.2〜0.5
×
黄褐色
低い
×
仮防錆・塗装下地



注記:



 耐磨耗性:かなり優れている


優れている


やや劣る


×劣る





耐食性:
かなり優れている


優れている


やや劣る


×劣る


素材の耐久性と同じ





接触抵抗:接触力;0.98N(100gf)


導通性が通い


導通性がやや悪い


×導通性かなり悪い





コスト:メッキの種類によるコスト差の目安として大きさ1dm2


(10cm×10cm;業界では1dcと言う)の板両面を処理した


値段を表示してある。


このコストは1995年当時の概略コストであり、形状、膜厚


グレード、需給状況によって変動するので相対的な参考値


として頂きたい。


尚、高、低で表示してあるものは一般ニッケルメッキとの


比較である。





適用素材:量産、小ロット生産に推奨


小ロット生産に推奨


使用する場合には、十分条件を検討する



使用しないほうが良い。処理できない。